きっと君は泣き止むよ。
一週間泣き続けても、きっと君は泣き止むよ。
だって君は、泣き止むために、今泣いているのだから。
だけど・・・・忘れてしまうわけじゃない。
君は絶対に、この悲しみを忘れてしまわない。
ずっと君の人生の中で、色褪せることなく、ソコにあるだろう。
君を強くばかりしてくれない思い出を抱いて、それでも君は生きる。

そんな君を愛しているよ・・・。








「置き去りの手紙」




4/28
もう少し時間がほしいと思う。今まで思いもしなかった。
僕はこの生の中で満足に生きているのだから。
ずっと君を想ってきた。その時の中で、過ぎる時間を惜しく、乞うことはなかった。
幸せな時間に笑い合えることが、純粋に嬉しかったから。
君と共に笑い合えていた。それなのに一瞬、僕は違う処にいるような錯覚を感じるんだ。
最近良く思う。君と生きる時間軸が、どうも違ってきていることを…。
だから、今は、少し時間がほしい・・・・。



4/29
  今日は、もう何年も読んでいない詩集を取り出して読んだ。
僕にとって一番切ないはずなのに、嫌いになれない詩。「I was born」
自分が生まれ墜ちた時に、母のお腹を圧迫して、息を止めてしまった自分の身体。
切なくとも、ヒトは生まれるという喜びがある…。例え・・・。
僕は誰の命も奪っちゃいない。
だけど、命を奪うより残酷な苦しみを与えているのかもしれない。
僕の生に意味がないとするなら、きっと君もない…なんてやはり僕は思えない……。



5/5
子供の日。女の子なのに、君はそよぐこいのぼりを見上げて喜んでいた。
無邪気だね。今日は僕の日だって言って、ケラケラ笑って、遠くを見て泣いた。
実はその涙のワケが解らない。楽しそうな君が、悲痛には見えなかった…。
なのに急に泣き出して…。
それでも笑おうとする君が、弱さゆえに泣いたわけじゃないことだけは解ったよ。
佇むしかない自分が虚しい・・・。



5/13
今日は君が来ない。電話の向こうで、忙しそうに「ゴメンネっ」と慌てる君さえも、
良いと思う僕は、随分とネジが緩んでいるらしい。
君といる時間も良い。君のいない時間もいい。
いない寂しさに、君という人の偉大さを知ることが出来る。
僕はなんてちっぽけなんだ・・・。



7/21
強い日差しに圧されて、少し苦しい。大好きな太陽が、まるで命を吸い尽くすように思う。
うだるような暑さなのに、寒い。それは肉体も精神もなのか。疲れたなぁ・・・。
それは今日に・・・と思うことにしておこう。



7/31
また1つ、月が終わる。暑苦しさに耐えながらも、生きる喜びを感じて、
書き続けたこのノート。実は今日止めにしようと思っていた。でも無理だと気付いた。
きっと明日の月初めには、すごくヤル気を出して、今の想いを忘れるのだと思う。
今日は7月が終わる…。



8/15
お盆。墓参りもしたけれど、なんと言っても今日は夏祭りがあって、花火があった。
毎年君が待ってる花火。灯ろうが、夜闇の中でキレイに流れていた。切なかった。
「キレイだね」とは、君は言わなかった。川の流れさえ見ていなかった。
川原の石ばかり、下駄で転がして。着慣れない浴衣が、君を幼く見せていた。
手を引こうとした。人の波に流されて、君とはぐれてしまいそうだから。
でも、出来なかった・・・。何故なのか分からない・・・。



8/19
君の大好きな愛犬の誕生日。君は、「もう、12才になったんだ☆」と喜びながら、
実は怯えていたね。彼らは先に逝くから。年を重ねるのが、だんだんと怖くなったんだね…。
同じように重ねた月日」。弟のように可愛がった存在。かけがえのない家族。
また1つ、君は恐怖を背負う。
だけど、今日だけは祝福しよう。君の家族が生まれ、出会えた日なのだから。



9/1
しばし休憩しよう。疲れたのじゃない。だけど書くことが、何だか苦しいから。
今度開く時までには、ここに書ききれないほどだといい・・・。



11/30
蒸し暑かった9月から、季節は変わり、寒い日が続く。
何度かこのノートを手に取っては、書こうとしたけれど、長い間沈黙してきた。
最近、良く君を怒らせてしまう。ちょっとしたことで傷つけてしまう。
それなのに、僕は何1つ後悔していない…。自分の考えだけが走ってしまう…。



12/10
何にでも終わりがある。どうやら僕にも、その時がもうすぐやって来るらしい。
  僕は知らなかった。いや、誰も「その時」まで、知ることなど出来ないのだろう。
死期を知る。恐くないと言ったら嘘だ。だけど緩やかな宣告なんだ。
春の頃のように、時間を惜しんだりしない。君とずっと一緒にいたい。そう思う。
でも、出来ないと知っても、もう悲しくはない。日に日に眩しく感じる君。
とうとう僕のこの手から、飛び立ってゆくのだね。君は知りもしない。
本当は君が飛び立つのだと……。
逝かないでと泣く君の方が、僕から離れてゆくんだ。
涙を流し、懇願しているのは僕の方。(あ、また時計の針が一周した)
君は鳥じゃないと思うことにするよ。だって、自由な鳥は帰って来ないだろう?
だから僕は、たんぽぽの綿毛だと思うよ。
離れゆく先で、また1つ美しい花を咲かせるのだと。また輝き出すのだと。
君思うと長くなる。終われない。
まるで、銀河鉄道の夜だ・・・。



12/13
どうやら、僕は大切なものを落としてきてしまった。
唯一、僕が君を笑顔にさせられる魔法だったのに…。
そんな小さな幸せも奪われてゆくのが、死なのか・・・?
もう、この手でカノンを奏でられない。置き去りにしてきた、僕のピアノ。
あそこにあるのに、鍵が見つからない。
透明な窓の向こう、君が手を振っているのに、窓には開けるところがどこにもない。
そんな感じ。もどかしい。
こんな手なんか要らない。こんな足なんか要らない。
こんな想いなんか要らない。こんな悔し涙なんか要らない。
ほしいのは、命じゃない。時間でもない。
たった一つの、ささやかな君の喜ぶ笑顔。
僕が奏でる分だけ微笑う、あの笑顔1つなのに……。
手なんか要らない。僕なんか要らない!!
もう抱きしめることも出来ないのなら・・・。




12/20
今までにないほど、泣き叫んだ君。プライドの高い君は、滅多なことじゃない限り、
泣き喚いたりしない。目を潤ませる程度ならまだしも・・・。
声をあげて泣いたりなんか・・・・。
躊躇いもなく、拭うこともなく、泣き続ける。
自分の視界が揺れてゆくのを感じた。もらい泣きじゃない。
自分が恐ろしく愚かだと思ったんだ。こんなになるまで、君を苦しめていたのだと。
強い力で、すがり付いた君を突き放したのは、愛がないからじゃない。
抱きしめる資格のないこの手が、今すぐにでも君に甘えてしまいそうだったから…。
初めてだったよ・・・嗚咽を繰り返しても泣き続ける君を見たのは・・・。
誰か僕を殺してくれないか。こんなにも愚かな僕を。早く、早く・・・・。



12/21
眠れなかった。一粒、一粒に、大切な想いがこもった涙を見つめた後、
のうのうと眠れるわけない。予想通り、君は昨日のことが嘘のように笑って、謝ったね。
あんなに激しく、美しい涙を「ゴメンネ」のたった一言で終わらせてしまう。
離れて眠った夜。静かな部屋で、声を殺して泣いただろうに、そんな陰ひとつ見せない。
「おはよう」としか言えなかった朝。
一杯のコーヒーを飲むのに、一時間もかかった。
昨日の君のように、今日は僕が泣いた・・・。



12/24
オシャレな洋服に身を包んだ君は、魅惑のボルドーのカクテルドレス。
良く似合っていたよ。少し高めのピンヒール。
そんなにオシャレして、背伸びしてかなくていい。
広く肩が開いた服。「何かキレイなネックレスでも贈れば良かったね」と言った僕に、
「そんなものは要らないわ」そんな君が好きだなと思った。
今夜ぐらい、君に静かな喜びが訪れるといい。
多くを求めない君に、幸あれ。



12/25
君に抱かれ、君を抱いて、僕は生きることを感じた。
僕の生誕を祝ってくれるなら、今は生きてゆける。



12/26
  祭りの後の淋しさを背負って、楽しかった時間の余韻に浸っている。朝降った粉雪。
積もることはなかったけれど、昨日の熱を下げるような、静かな雪だった。
何となく思った。
あぁ、僕はこの雪に連れられて、死をそろそろ目指すのだと。
後悔も、悔いも、悲しみも、ない。
なのに流れ出した涙の意味は分からない。
明日で最後にしよう。もう、もう、この気持ちを文章に出来ないだろうから…。



12/27
 今日で最後。
残りのページにすべて、愛を書き付けてもいいほど、君を想ってる。
いつか、君の手がこのページをめくる日があったとするならば、僕は言おう。
もう想うことはやめなさい。僕はもういないのだから。はやくその花を枯らし、
綿毛となり、美しい花を、別の人の前で見せてあげて下さい。
もう、僕は空っぽなんだ。それは空虚ではなくて。言い表せないけれど・・・。
君に幸せも、カノンも、笑顔も、何もあげることが出来ない。
こんなに泣きたくなるのは、きっと君のせいだ・・・。こんなに愛してしまったから…。

思い出せないほど、怒濤の時間を過ごしてきた僕ら。
この過酷な運命の中に、引き込んだ僕を恨んでいるか?憎んでいるか?
僕はね、大声で泣き出したいほど幸せだった。すべて伝わらないのが悔しいほどに…。

君がもしも読んでくれるのならと、書き始めた日記。
読まずに捨ててしまえるほどの、幸せが君に訪れるといい。
だけどもしも、最後まで見ることがあるのなら、今はどんな季節で、どんな時間が流れていますか?
そして、僕がいなくなってから、どれぐらいの時間が、経過しているのでしょうか。
いつの日か、何にでも終わりがある。と書いたことがあった。
そう、この今書いている文章にも、終わりがなくてはならない。
終われないものを、終わらせるのは苦痛だね…。だけど、終わるよ。
この文も、この命も。
だけど、想わせてほしい。
君と話した永遠の話の続きを。信じさせてほしい。
君はいい。
永遠も、運命も、神も、仏も、信じないひとのままで。
そんな君が好きだから。

あぁ、これで僕はゆけるよ。

もしも僕が神になったら、君は信じるのかな?
あれほど嫌いだと言った神でさえも・・・・。
そんな自惚れさえ、今では悲しいだけだ…。



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